心を病んで長期間、仕事を休んでしまい、復職したけど、すぐに続けられなくなる――。そうした悩みを持つ人は少なくありません。専門家は、休養中の取り組み次第では、病気になる前よりも仕事で高い能力を発揮することが期待できると指摘します。どんな取り組みが必要なのでしょうか。双極性障害(そううつ病)を患う39歳の男性に話を聞きました。
社会人になり数か月で休業
大学卒業後、テレビ番組を制作する仕事に就きました。昼夜問わず不規則な生活が続き、社会人1年目の夏頃から抑うつ状態になりました。メンタルクリニックでうつ病と診断され、1~2か月休養。一度は復職しましたが、激務には耐えられないと考え、翌年、退職しました。その後、別の会社に就職しました。
今度は土日がきっちり休みで、急に呼び出されることもありません。残業で帰りが遅くなる日もありましたが、大学時代の同級生はバリバリ働いていて、後れを取り戻したいという気持ちもあり、頑張りました。
しかし、入社して2か月後、再び抑うつ状態になり仕事を休みました。前の職場で体調を崩したのは、勤務時間が不規則だったためなので、自分で仕方ないと思える部分もありました。しかし今回はそういった理由はなく、絶望的な気持ちになりました。2~3か月間休養して仕事に戻りましたが、数年後、再び気持ちが沈み、また休むことになりました。
復職支援プログラムに参加
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リヴァで実施されているグループワークの様子(リヴァ提供)
2回目の休業の時、会社の産業医から、心の病を患う人の復職・再就職を支援する会社「リヴァ」を紹介されました。ここでは、公認心理師や臨床心理士、精神保健福祉士といった専門家のサポートを受けながら、ストレスへの対処法を身につけたり、自分がどういった状況になると調子が悪くなるのか考えたりしていきます。5~6人でグループワークをしながら、コミュニケーション能力も磨きます。
リヴァには週5回通い、復職に向けた準備をしました。「集団認知行動療法」というプログラムでは、嫌なことがあった時、自分は何を考えたか、どういった感情が起こったか、ほかの考え方はできなかったか、といったことを思い返しました。
例えば、予定を詰め込んだ時、周囲から「予定を入れすぎ」と言われることがありました。自分が働けない時期があることにコンプレックスを感じていただけに、「やっと働けるようになったのに何でそんなことを言うの?」とイライラしていました。
しかし、プログラムに参加して、自分は「そう状態」になることがあると気づきました。「無理をするな」と言われていた時は、そう状態の時で、周囲の人は気遣って止めてくれていたんだと理解できるようになりました。
診断名も変わり…
主治医にはそう状態の時があることを伝えました。すると、診断名は、当初のうつ病から双極性障害になり、処方される治療薬も変わりました。双極性障害と診断されるまでに約5年かかりました。
そう状態の時に、仕事や遊びの予定をたくさん入れて、その数か月後には気持ちが落ちてしまい、キャンセルする――。これを繰り返せば、周囲の信頼を失うことにつながるなと反省しました。その後も転職を繰り返しましたが、就職活動をしている時も「そう状態」になっていたということに後で気がつきました。
今も、予定をたくさん入れてしまいそうになることがありますが、周りの人たちが忠告してくれた時は、気をつけるようにしています。指摘してもらえることはありがたいです。自分の「成長」も感じています。