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難病「家族性地中海熱」を患う元バスケ日本代表、藤岡麻菜美さん 発熱、腹痛に何度も…「幸せ」と感じるワケ

 元バスケットボール女子日本代表の藤岡麻菜美さんは、原因不明の発熱や 倦怠(けんたい) 感などの症状に悩まされてきた。2022年4月についた診断名は難病の「家族性地中海熱」。いったいどのような病気なのだろうか。

新型コロナにかかったかも?

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難病を抱えながら、大好きなバスケットボールを続ける藤岡麻菜美さん

 藤岡さんは、バスケットボールWリーグの「JX-ENEOSサンフラワーズ」に所属していた20年2月、倦怠感と発熱に見舞われた。当時、けがをしており、その日は試合で遠征するチームメートを見送った後、寮からリハビリ施設に1人で向かった。その帰り道、運転する車の中で、体がだるいと感じ、寮に戻ると37.5度くらいの熱があった。翌日になると、熱は39度近くにまで上がり、おなかも痛くなった。

 国内では、ちょうど、新型コロナウイルス感染症の患者が出始めた時だった。「『コロナだったらどうしよう。チームメートにうつしていたら迷惑をかけてしまう』と思うと、とても不安でした」。しんどさに耐えながら病院に向かい、新型コロナとインフルエンザの検査を受けると、ともに陰性だったが、症状が重かったため、そのまま入院した。腹痛は「泣きたいくらい」の激しさで、体の震えが止まらなかった。インフルエンザにかかった時のような関節痛もあった。

 絶食して点滴をし、5日ほど入院すると回復した。

回復後にまた高熱と倦怠感

 その後、微熱が出ることはあったが、処方された「コルヒチン」という薬の効果なのか、しばらく、重い症状は出なかった。この年の5月に現役を引退。翌月から、母校の千葉英和高校(千葉県)女子バスケットボール部のアシスタントコーチになり、指導者の道を歩み出した。

 コートの外から部員たちの姿を見ていると、よく走り、練習はきついはずだと感じた。それなのに、皆、楽しそうにボールを追いかけていた。後輩たちのプレーに、心を揺さぶられ、翌21年5月、アシスタントコーチの肩書を残したまま、Wリーグの「シャンソンVマジック」に入団。現役に復帰した。

 だが、半年ほどたつと、再び高熱と倦怠感に襲われた。「運動強度が上がったことが影響したのかもしれません。それまで症状が落ち着いていたので、処方してもらっていた薬を飲むのも自己判断でやめてしまっていました」と振り返る。

診断がつき、「ほっとした」

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自身の家族性地中海熱について話す藤岡麻菜美さん

 チームの活動拠点だった静岡県内にある病院を受診すると、症状などから「リウマチや 膠原(こうげん) 病を診る診療科を受診してみてはどうか」と提案され、聖隷富士病院(静岡県富士市)のリウマチ・膠原病科にかかった。同科部長の山田雅人さんは、これまでほかの病院で受けてきた検査の結果や、周期的に3日程度続く発熱や腹痛を繰り返すといった病歴から、難病の「家族性地中海熱」と診断した。 

 以前、服用していたコルヒチンは、家族性地中海熱の治療に使用される薬だったが、同病院を受診するまで、病名がついたことはなかった。「病名が分かり、ほっとしました」。指定難病の医療受給者証を取得し、コルヒチンに加えて、炎症に関わる物質に作用する「イラリス」という注射薬も約1か月に1回、打つことになった。

症状が出ても自分を責めない

 23年2月、シャンソンを退団し、千葉英和高校のアシスタントコーチからヘッドコーチに就任した。後輩たちの指導をしながら、3人制のバスケチーム「TOKYO  DIME(ダイム) 」にも所属。選手としての活動も続けている。

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真剣なまなざしでバスケ部員たちに話しかける藤岡麻菜美さん(千葉英和高校で)

 今は、コルヒチンを服用しながら月1回、千葉県内の病院で、イラリスの注射を打ったり血液検査を受けたりしている。

 症状が出てしまうことはあるが、周囲の人たちは、常に体調に気遣ってくれる。「患者にとっては、体調が悪い時に話を聞いてくれる人がいて、安心・安全に働ける環境が整っていることが大切だと思います。今は、そうした環境で仕事をすることができているので、幸せです」

 体調が悪いと、つい、周囲に迷惑をかけていると感じてしまう。ただ、症状が出てしまうのは仕方がないことだ。「自分を責めないようにしように心がけています」という。

 千葉英和高校は24年の「ウィンターカップ」(全国大会)に千葉県代表として出場した。「元気な時は精いっぱい仕事をし、バスケを含めて、いろいろなことを教えていきたい。そして、母校から自分に次ぐ日本代表選手を輩出したいと考えています」

疲れをためない

 この病気は、体内で炎症が起きる「自己炎症性疾患」だ。熱や腹痛、倦怠感、関節炎といった症状が3日ほど続いて治まる。1か月ほどすると、また同様の症状が出るということを繰り返す。特定の遺伝子に変異が見られ、これが病気に関わっていると考えられている。だが、発症要因については不明な点も少なくない。地中海地方の子どもに多い病気だが、日本人の場合、小児から20、30歳代にかけて発症する人の割合が多い。

 山田さんは「症状のない時は、食べ物などの制限はなく過ごすことができます。疲れや睡眠不足、ストレスは、症状が表れる引き金となるため、無理をしないことが大切です。女性の場合、生理周期に一致して症状が出ることもあります。症状からこの病気が疑われる場合は、膠原病やリウマチを専門とする医師に相談してほしい」と話している。(読売新聞メディア局 利根川昌紀)

【写真4枚】3人制バスケでプレーする藤岡麻菜美さん

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ふじおか・まなみ 千葉英和高校、筑波大学卒。2016~20年、JX-ENEOSサンフラワーズ(16~17Wリーグ・レギュラーシーズン1位、プレーオフ優勝、18~19Wリーグ・レギュラーシーズン1位、プレーオフ優勝)。21~23年、シャンソンVマジック(21~22Wリーグ・レギュラーシーズン6位、プレーオフ4位)。【日本代表歴】10年、U―16アジア選手権準優勝、U―17世界選手権出場。12年、U―18アジア選手権準優勝。13年、U―19世界選手権出場。15年、ユニバーシアード4位。16年、リオデジャネイロオリンピック日本代表候補、17年、ユニバーシアード準優勝、アジアカップ優勝(ベスト5受賞)。18年、ワールドカップ出場。

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やまだ・まさと 1986年3月、順天堂大学医学部卒業。90年7月、同大学医学部膠原病内科学講座入局。94年3月、ニューヨーク大学病理学リサーチフェロー。97年4月、順天堂大学医学部膠原病内科学講座助手。2001年9月、同講師(静岡病院)。04年4月、同助教授(静岡病院)。07年4月、同先任准教授(名称変更)。20年10月、聖隷富士病院リウマチ・膠原病科部長。日本リウマチ学会専門医、日本リウマチ学会指導医、日本リウマチ財団登録医、日本内科学会認定医、静岡県特定疾患公費負担(難病)認定審査委員(膠原病、免疫系)。


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